BSIDEが生まれた理由は、一枚の写真の中にあります。
いきなりですがネタばらし。
だって圧倒的にカッコよかったもん。
BSIDEのロゴを見て、あのアーティストを連想するロックファンの皆様、正解です(笑)。
「モロにデビッドボウイじゃん!」でしょ。僕がボウイを好きになったのは中学生くらいですが、ひょっとすると音楽よりもビジュアルの衝撃が強かった気がします。妖艶でグラマラス、火星からやってきたロックスターという設定も納得の風貌。それらは写真家、鋤田正義氏が撮影したものでした。2019年にいろんな業種の皆さんと実行委員会スタイルで取り組んだ「鋤田正義写真展in大分」。期間中、オープニングセレモニーとトークイベントの2回、僕はたくさんの人の前で鋤田さんと対談をさせていただく機会をいただきました。ボウイはもちろんT-REX、イギーポップ、忌野清志郎、ジョーストラマー…鋤田さんがとらえてきたのは、僕にとって永遠のロックスターばかり。訊きたいことは山ほどあるけど、独りよがりな質問ばかりはできないし、お客さんにも鋤田さんにも楽しんで欲しい。そんなことを考えながらトークセッションを想像するとじわじわと緊張感に覆われていくのでした…。
インタビュアーとして大切なこと、
決め事じゃない「セッション」を楽しむ。
少し余談ですが、僕は仕事柄、年間おそらく100人以上の方にインタビューをします。クライアントのヒアリングなどを含むと、もっとたくさんの人と対話しています。ライターとして、原稿を書くためにという理由でインタビューを実施しますが、そこでインタビュアーとしての反射神経のようなものが、ある時期からついてきた気がしています。そのことを意識するようになってからは、あまり事前に質問事項を決め込んだり、こんな答えが欲しいと望みすぎないことを大切にしています。会話は、僕と対象者のセッション。どんな方向に行くのか、まっすぐな道なのか曲がりくねるのか、はたまた寄り道しちゃうのかは、二人の間に流れる「空気」次第。
そんなことを考えていたら、鋤田さんとのひとときも、ライブ感を大切にできれば上手くいくのでは?と思えてきたのです。ボウイとの思い出、好きな映画のこと、少年時代の話…鋤田さんとのトークセッションは、とてもリラックスしたものになりました。たくさんの逸話を「この時間がずっと続くといいな」と心から思いながら聞いていました。最後に鋤田さんの好きな言葉を伺ったところ、「好きこそ、ものの上手なれ」という答えが返ってきました。これは鋤田さんのお母さんが少年時代の鋤田さんに伝えた言葉だそうです。今でもその言葉が自身にとって特別な響きを持っているとおっしゃっていました。ボウイをはじめとするアーティストが、なぜ鋤田さんだけに、心をゆるし、あんな表情を魅せるのか、その理由が少しだけわかった気がしました。
新しい何かが生まれる瞬間を
大切な誰かのそばで感じるために。
冒頭でBSIDEのロゴはボウイへのオマージュであることは白状しましたが、実は僕のオーディオルームに飾っている、鋤田さんが撮影した1枚の写真こそが、僕がこの会社をつくろうと決意した本当の理由です。ボウイと向き合うギタリスト、ミックロンソン。彼がいたからこそ、ボウイはロックスターになれた。ボウイがロックスターになった瞬間、彼がそこにいた。どちらでもいいけど、僕の中ではボウイとミックロンソンはニコイチなんです。そんなミックの伝記映画のタイトルはBESIDE BOWIE。「ボウイのそばに…」です。僕もミックのように、誰かのそばで、何かをが生まれる興奮と熱狂を感じながら、自分のできることに全力を尽くしたい。ふと思えば14歳で出会ったロックスターの写真が鋤田さんの作品だったことから始まった物語は、偶然のようでどこか運命的だったような…そんな不思議な気分なのです。